第27章

―姿の見えない蛇が、今まさに食い込んでいる証明ってことなのか」

まと

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? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? あご

にわとり

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ふんさい

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僕や神原には、そして無論千石にも、その大蛇、蛇切縄が見えないから、その怪異が千石の

皮膚に残す食い込みだけがただ、透けて見える――というわけだ。

「それでも、阿良々木くんや百合っ子ちゃんといった、半人半妖みたいな存在だからこそ、そ

の痕だって見えるんだと思うよ。巻き憑かれている本人である、お嬢ちゃんもまたしかりだ。

恐らくきみ達三人以外の人間には――たとえば、ツンデレちゃんや委員長ちゃんなんかには、

その痕さえも、見えないはずだよ。内出血程度は見えるかもしれないけれど――」

長ズボンで痕跡を隠す必要なんかないんだよ。

その身体を恥じることもない。

そう、忍野は言った。

けれど、そんな問題じゃないと思う。そりゃ、理屈ではそうなのかもしれないけれど――今

回は偶然、それを見たのが僕と神原だったというのが、またしても千石にとってはついてな

かったのかもしれないけれど――でも、本人にそう見えているというだけで、案件としては十

分過ぎるほど十分なのではないだろうか。

「かもね。うん、そうかもしれない」

「なんだよ、えらくあっさり認めるな」

「たまには僕も素直にはなるさ。暇だからね」

「お前は暇なときしか素直になれないのか……」

「そう言えば、普段着は長袖長ズボンでいいとして、これまでその子、学校はどうしていたん

だい? 阿良々木くんの卒業した中学校は、女子の制服はスカートじゃなかったの?」

「スカートっつーか、まあ、ワンピース型の制服だった。こう、オールインワンのな。調査中

に見たことないか?」

「ああ、ある。そうか、あれが阿良々木くんの母校の制服なのか。可愛いね――でも、結局、

それじゃあ脚がむき出しになっちゃうじゃない」

「だから千石の奴、痕跡が出てきてからは、学校、休んでるんだってよ。靴下で隠れてた頃

は、まだ我慢できてたらしいんだけど――じゃあ忍野、逆に、その蛇切縄本体を、なんとか見

ることはできないのか? たとえば、お前だったら」

「無理だよ、僕は人間だもん」

あっさり言うじゃないか、この専門家。

仕事放棄に等しいぞ、その台詞。

「僕に限らず、今回のようなケースでは、憑かれている本人に見えないものを他の人が見よ

うっていうのは、基本的に難しいと思うけどなあ。いくら阿良々木くんが元吸血鬼だって言っ

てもね。補足しておくと、蛇切縄の姿を見ることができるのは、憑かれている本人じゃなく

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ほうき

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て、その蛇を遣わした方だろうね――それも、今回は偶発的なケースだから、きっと、遣わし

た方にさえも、見えないだろう。だからそのお友達は、呪いが成功していることにすら、気付

いていないはずだ。気付いていたら教室で大騒ぎ……いや、まあ、お友達も、見えているのに

黙っているだけなのかもしれないけどね。だとすれば、本格的な悪意だけど……いくらなんで

も、そこまで本格的な悪意じゃないだろう。そうだったら、お嬢ちゃんはとっくに殺されてし

まっているはずだ。ま、こんな可能性の話をしても仕方がない。当て推量もいいところだ。あ

あ、でも――そうだ、阿良々木くんなら、見るのは無理でも、触ることはできるかもしれない

ね」

「ん……いつかお前がやったみたいにか?」

「さーて、なんのことかな」

すっとぼける忍野だった。

そこでとぼける意味がわからないけれど。

「触ることができたら、引き剥がすこともできるだろうけど……それはやめておいた方がいい

か。蛇は気性の荒い動物だからね。そんなことをしたら、間違いなく、蛇切縄は阿良々木くん

に襲い掛かってくるだろう。それを何とか回避したところで、今度は呪いを掛けた、そのクラ

スメイトのところに返っちゃう」

「呪い返し――ってことか」

「人を呪わば穴二つ――だよ。まあ、別にその子も、本気でお嬢ちゃんを殺そうと思ったわけ

じゃないはずだし、呪い自体、全然信じちゃいなかったんだろう。本当に『あんたに呪いを掛

けてやったわ』程度の、嫌がらせのつもりだったんだろうなあ。ふうむ。とはいえ、そんな気

持ちでオカルトに手を出されても、困る……僕みたいなはぐれ者はくいっぱぐれだ。商売さ

がったりだよ」

「あってるようで間違ってるな、その言葉」

「はっはー。まあ……でも、いいか」

忍野はそう言って、簡易ベッドから降りた。そして、てくてくと歩いて、この教室から出て

行こうとする。僕は慌てて、そんな忍野の後ろ姿に、「おい、どこに行くんだよ」と声を掛け

た。

「んー。ちょっと待ってて」

それだけ言って、本当に教室から出て行った。

気まぐれと言うか、あれではただのわがままだ。

参ったな……待ち時間があるのなら忍の様子でも見に行きたいところだが、それで忍野と入

れ違いになっても馬鹿馬鹿しいし……、そういえば、忍はどの教室にいるのだろう? 忍野と

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違う教室にいるというのは珍しい。またぞろ、ミスタードーナツ関連で、忍野と喧嘩でもした

のだろうか。

仕方ない、中間報告を入れるか。

僕は携帯電話を取り出した。神原に電話を掛けようとしたのだ――ちなみに千石は、田舎の

中学二年生らしく、まだ携帯電話は所有していないとのことだった。まあ神原のことだ、たと

え両親に見つかっていたところで、うまくかわすことだろうが……、本格的な百合だというこ

とと、かなり強度のエロだということさえバレなければ、あいつはあれで、とても模範的な、

文武両道の学生に見えるはずなのだから。

しかし、アド

レス帳を開こうとした瞬間、忍野が、

「お待たせ」

と、戻ってきた。

早い。

僕の行動を見越しているかのように、早い。

本当、見透かしたような奴だ。

「お。なんだい、その文明の利器は。誰かに電話するところだった?」

「いや……ほら、神原と千石に、先に連絡入れようかと思ってさ。思ったより時間、掛かりそ

うだったから」

「だったら、電話する必要はないよ。僕の話はもう終わりだからさ。はい、これ」

忍野はそう言って、ドア口からダイレクトに、僕に向かって、右手に持っていた何かを投げ

た。突然の投擲に、僕はちょっとあたふたしながら、しかし、なんとか取りこぼすことなく、

それをキャッチすることができた。

それは、お守りだった。

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